No.71 2000/11/04
オーバードライブが燃費を悪くする?

 昔(1970年代ころまで)の車は、法定速度(60km/h)以内での走行に最適なように変速機のギア比が設計されるのが普通でした。マニュアル車では3〜4速、オートマチック車では2〜3速が主流でした。
 一部の大排気量の車には、オーバードライブという増速機が変速機の後段に設けられることがありました。高速走行時にエンジンの回転を下げて、騒音を小さくするとともに燃費を良くするためのものです。
 今では、大衆車クラスでも軽自動車でも、マニュアル車では5速、オートマチック車では4速と変速機の段数を増やすことによって高速走行までカバーするのが普通になっています。そして、高速走行用の最高速ギアを慣習的にオーバードライブと呼ぶことがあります。
 トヨタのオートマチック車のセレクターにはOD(オーバードライブ)スイッチが付いていて、これをオンにしておくと、高速走行時に自動的に4速に入ります。私が乗っているホンダのオートマチック車の場合は、セレクターにD4、D3というポジションがあって、D4に入れておけば4速まで自動変速されます。私の車の場合、アクセルをあまり踏まずにゆるやかに走っている時には、50km/hくらいで4速に入ります。

 マニュアル車の場合、高速走行用の5速は、ゴー・ストップを繰り返す街中の走行には加速が悪くてほとんど使えません。しかし、オートマチック車なら、4速に入っても、加速が必要になったらすぐに3速以下に切り替わってくれますから、何ら不便はありません。多くの人はODスイッチ・オンまたはD4ポジションで走っているだろうと思います。私も、わずかの間でも50km/hで巡航する時には4速に入ってくれた方が、エンジンの回転が下がって燃費の節約になるだろうと思っていました。
 ところが、最近知ったのですが、どうもそうではないようです。街中の走行ではODスイッチ・オフまたはD3ポジションで走った方が燃費には有利なのだそうです。というのは、今の車のエンジンは賢くて、エンジンの回転がおおむね1500rpm(revolutions per minute:毎分回転数)以上の時にアクセルを戻すと燃料の供給が止まるようになっているからです。
 大衆車クラスのオートマチック車の場合、50km/h程度で4速に入ると、エンジンの回転は2000rpmを下回ります。それからアクセルを戻して減速すると、エンジンの回転はすぐに1500rpm以下まで落ちますから、アイドリングを維持するために燃料の供給が続きます。3速ならば、50km/hで2000rpmくらい。アクセルを離してから1500rpm以下になるまでしばらく燃料の供給が止まってくれるのです。
 ですから、ODスイッチ・オンまたはD4ポジションは、50km/h以上で長時間巡航できる時に限った方がよいようです。
 それと、ある程度急な下り坂では2ポジションに入れるべきなのは、ブレーキが焼けるのを防ぐためにも当たり前のことですが、Dポジションよりも2ポジションの方が燃費にも良いということは、JAF(日本自動車連盟)での実験でも確かめられているそうです。

 ついでに、マニュアル車の場合の注意事項も述べておきます。
 よく言われるとおり、空吹かしは燃料の無駄です。回転を上げると、エンジンの内部摩擦で消費されるエネルギーが増えるからです。これは当たり前のことです。
 ところが、最も燃費に有利なエンジンの回転数は、走行速度や必要なパワーによって違ってきます。エンジンに負荷をかけた時には、低い回転ではかえってエネルギー効率が悪いのです。可能な限りの負荷をかけた場合は、最大トルクが出る回転数あたり(大衆車クラスの多くのエンジンでは4000rpm前後)で最もエネルギー効率が良くなります。
 つまり、加速時には、低いギアでエンジンの回転を適度に上げた方が良いのです。低速走行時に高いギアで無理にエンジンの回転を低く保つことは、エンジン内部の潤滑が負荷に耐えられなくて長い間にエンジンを傷めることが考えられますし、燃費のためにも良いことではないのです。

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