No.119 2002/01/24
“正義の味方”に抗議した

 スパムメールの撲滅のために活動しているSpamCop(スパム警察の意味)という組織があります。そこから私の会社のポストマスター(メールシステム管理者)宛に自動メールが3通飛び込んできました。私の会社のドメイン名を偽の差出人アドレスとしてかたったスパムメールの受信者からSpamCopに通報があり、その通報メールに基づいて自動的に私の会社のポストマスターのアドレスを検索して送ってきたものです。
 そのメールに書かれていたURL(ウェブアドレス)にアクセスしてみたら、次のように書いてありました。(そのページは非公開なので、ホーム(トップ)ページからはたどれません。アドレスは伏せさせていただきます。)
This report is concerning an email address (********@***.****.co.jp) mentioned in the body of an unwanted email.

訳:このレポートは、望まれざる電子メールの本文に記載された電子メールアドレス(********@***.****.co.jp)に関するものです。
 SpamCopからだったかどうか覚えていませんが、以前にも同様な自動メールが来たことがあります。その時は、ウェブページ上で「我々は無関係の第三者(an innocent third party)である」を選択して、容易に回答を送信することができました。しかし、今回のページは、通知を送りつけられた我々がどういうアクションをとればよいのかが容易にわかるようには書かれていませんでした。
 スパマーにアドレスをかたられた被害者に対してこの一方的なやり口は何だ!私は、送りつけられたメールに対して抗議文を返信しました。
 そうしたら、すぐにまた自動メール。「あなたはロボットか?」というサブジェクト。私は最初、「馬鹿にしとるのか!」と思いました。本文には、「ロボットからのメールと人からのメールを区別するためにこのシステムを使っています。もし先ほどのメールが人からのものであったならば、このリンクをクリックしてください」と書かれていました。
 しかし、クリックしてみると、パスワードを求める認証ウィンドウが現れます。後で再度やってみたらなぜか「返答ありがとうございます。あなたの返信はこれから配信されます」というメッセージが表示されたのですが、その時とまどっていた私は、SpamCopのサイトのページをあちこち見て、代表者への連絡用のメールアドレスを探し出してそこへ再送しました。「ISP(インターネットサービスプロバイダ)専用」と書かれていましたが、かまうものか。

 実在するまっとうな組織のドメイン名をかたったスパムメールは、1年以上前から激増しています。だから、差出人アドレスを真に受けて苦情の返信をしてはいけないというのは常識になっています。実際、私の会社のドメイン名をかたったスパムメールが大量に流れても、最近では私の会社に苦情メールが来ることはほとんどなくなっています。
 SpamCopは、アドレスをかたられたドメインの管理者に自動メールを送りつけることをやめるべきです。「あなたのドメイン名がかたられている可能性もあるので知らせてあげる」という意図があるのだとしたら、それはよけいなお世話です。かたられたドメインのポストマスターは、たくさんのエラー差し戻しが押し寄せるという被害を受けて、すでにそのことを知っているからです。
 そして、全世界に自動メールを送りつけるからには、何ヶ国語かのウェブページを用意するか、あるいは英語国の小学生くらいの読解力に合わせた英文で説明するなど、非英語国にも配慮すべきです。英語でさえあれば世界中の人が理解できるべきだと言わんばかりの態度は傲慢というものです。
 “正義の味方”も、悪人の手口の変化にすみやかに対応しなければ、罪をなすり付けられた無実の第三者にとって“悪”になります。

 私は、私の会社以外にも日本の実在のドメイン名がスパマーにかたられていることを知っています。英語力後進国といわれる日本では、「我々は無実だ」と主張しようにもどうすればよいのかとまどってしまうネットワーク管理者が多いのが現実でしょう。
 私は、英語を読むことはなんとかできますし、かつて会社で技術英作文訓練を受ける機会にも恵まれました。しかし、十分な背景知識がないことがらについては読解に苦労します。それは、パソコンにうとい人が日本語のマニュアルを読んでも理解できないようなものです。まして、十分な英語訓練を受けていない日本のネットワーク管理者が英語の自動メールを送りつけられたら、とまどうのは当然です。

 スパマーに罪をなすり付けられて、英語に自信がないために無実を主張できない日本人たちをかばいたいという気持ちで私が送った怒りの抗議文は、以下のとおりです。「日本人をなめるんじゃねえぞ」という意思を表すつもりで、わざと命令文に「Please」を付けていません。上手な英文ではないと思いますが、意味は通じるはずです。
 スパマーにアドレスをかたられた被害者がSpamCop(または同様のことをやっている組織)に無実を主張するために利用される限り、私はこの英文については著作権(copyrightすなわち複製独占権)を主張しません。コピーして、ドメイン名の部分を修正してお使いくださってけっこうです。

To whom it may concern,

   This is a postmaster of the "****.co.jp" domain in Japan.
   We have found that some spammers distribute UCE under fake
"****.co.jp" addresses.  Your reports are troublesome for innocent
administrators, especially Japanese people, because there are few
Japanese people who can well read and write English.  Spammers in the
U.S. or somewhere else often put the blame on Japan domains.
   We request you to reconsider your policy.  Show the evidence that the
spammer is in our domain, not depending on the From header but on the
Received headers.  We, who are bad at English, don't have enough time to
deal with innocent matters in a foreign language.

Thanks.
訳:
関係者殿
 こちらは日本の「****.co.jp」ドメインのポストマスターです。
 我々は、偽の「****.co.jp」アドレスをかたってUCE(訳注:Unsolicited Commercial E-mail:スパムメールのこと)をばらまくスパマーたちがいることを知っています。あなたがたのレポートは、無関係のシステム管理者、特に日本人にとっては迷惑です。英語を上手に読み書きできる日本人は少ないからです。アメリカかどこかのスパマーたちは、しばしば日本のドメインに罪をなすり付けています。
 我々は、あなたがたのポリシーを再考するよう要求します。そのスパマーが我々のドメインにいるという証拠を、FromヘッダでなくReceivedヘッダによって示しなさい。英語が苦手な我々には、無関係のことに外国語で対応するための十分な時間はありません。
よろしく。

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